第35章 〜赤と黒のクラッシュ(殉職・謳歌)〜
ーーー数日後
椎奈「はあ?!! 大学院生の男と同居してほしい?!!」
コナン「ああ。頼むよ姉さん! この通りだ!!」
リビングで椅子に腰掛けながら話していた新一が、この通り、と両手を合わせて頼んできた
そのパンっという音に反応して、毛づくろい中のユキが床から私たちを見上げる
いきなり同居してほしいなどと言われた私が、ため息をつくのは当然で…
椎奈「はぁ…。そんなこと急に言われても困るって。私は芸能人なんだから、世間体もあるんだよ? どんな人間かも知らないし…」
本当は知っているけど…、と私は心の中で捕捉した
そんなことなど露知らず、新一は呆れ顔の私にその大学院生について教えてくれた
コナン「名前は沖矢昴さん。東都大学大学院工学部博士課程に所属してる、27歳の男の人だよ。……まぁ、そういう設定っていうのが正しい言い方なんだけど」
椎奈「なぁに?その裏がありますよっていい方…」
コナン「姉さんは知らないだろうけど、昨日、赤井さんが来葉峠でキールに射殺されたんだ。でもそれはすり替えトリックで誤魔化されていて、本物の赤井さんは現在、その大学院生に姿を変えてる」
椎奈「なるほど。つまり新しい自分を謳歌しようとしたけど家がなく、渡り鳥の彼は新しいお家探しをしていて我が家に照準を定めている、と?」
コナン「うん。言い方はあれだけど、まあその通り」
椎奈「たしかにそれは困った話ね…」
新一の話から察するに、すり替えトリックは成功したようだ
でもなぜいきなり我が家に来る? 元の世界では最初はアパート住まいじゃなかった?
この家に住むにしても、問題だらけだ
どうやらそこらへんは私が弄るしかないかとため息をつき、説得にかかる
椎奈「…さっきも言ったけど私は芸能人。彼は姿をあまり晒すべきじゃないでしょう? あらぬ誤解でスキャンダルになったら私も彼もロクなことにならない」
コナン「いや、そこらへんは分かってるんだけどよ…。この家の方が赤井さんにも都合がいいんだ。なんか、灰原を守らないといけないらしいし…」