第35章 〜赤と黒のクラッシュ(殉職・謳歌)〜
椎奈「…うん。お兄さんの言う通り、赤井さんのこの事件は知ってたよ。13日の金曜日だもんね、今日は」
村田「…っならなぜだ? 全ての始まりである弟の幼児化さえ止めようとした君が、なぜ赤井のこの件を言わなかった?」
いつもの彼女なら、組織との戦いは犠牲者が出るものであれば必ず介入しようとした
助けることがなくても、せめて見届けようとした
なのに今回、彼女は秘密の共有を許した赤井が死ぬ今日という日を黙っていた
こんなのは工藤椎奈らしくない……!!
俺は動揺して咎めるように言ってしまい、それに目を伏せた彼女は出した携帯のとある画面を開いて俺に見せてきた
それは赤井からのメールで、日付は今日の丁度お酒を飲んでいた頃合い
その文面を見た瞬間、俺はハッと息を呑み椎奈を力一杯抱きしめた
村田「!そうか、赤井から手出しするなと言われてたんだな…。すまない…!君を責めるようなことを、俺は…」
椎奈「ううん。私の方こそ、ごめんなさい…」
そう言って、彼女が俺の服を握りしめてきた
彼女がなぜ謝る必要がある?赤井は自分でそれを拒み、死を選んだんだ……
だが俺はこの時、彼女の謝罪の本当の意味の分かっていなかったーーー
村田「椎奈、本当に悪かった。家の鍵はスペアを置いておくからまた会った時に返してくれ」」
椎奈「うん」
服を掴む彼女の手をそっと離して、俺は玄関に手をかけた
玄関を出て工藤邸を後にした俺は、とりあえず駅を目指して歩き始めた
村田「(あのメールのことはとりあえず零にも言っておくか…。アイツも赤井の死には色々疑問を持ちそうだし…)」
ーーー村田side終了
ーー私の方こそ、ごめんなさい…。彼を守るためにみんなに嘘をつく…ーー