第22章 〜黒の組織から来た女〜
なるほど、と私は納得して、思わず苦笑いした
椎奈「私、べつに気にしてないわけじゃないけどね…でも、新一は生きてるしいいかなって」
灰原「…え?」
椎奈「生きてるなんて奇跡なんでしょ?小さくなったなら元に戻れる薬を探し出せばいいわけだし…」
半分は自分に言い聞かせるように言った言葉に、彼女は本心だと悟ったようで呆気にとられた様子を見せた
灰原「…前向きなのね、あなた」
椎奈「後ろを向くなって、昔ある人に言われたからね。それに…」
灰原「?」
私は、志保ちゃんから宮野明美さんを思い出し、無意識に笑顔になった
椎奈「ここだけの話、妹をよろしくって言われたんだよね明美さんに」
灰原「?!!あなた、お姉ちゃんをしってるの?!」
明美さんの名を出すと、驚いた様子で身を乗り出してきた彼女
椎奈「まぁね。ちょっとだけ話したことがあるの。とってもいい人だなって思ったよ。ファンだって言ってもらえて…今度、妹と3人でお茶しようって言ってくれた」
灰原「!!」
そう言うと、志保ちゃんはさらに驚いた
しかし、その顔にすぐ陰りがさした
灰原「そう…。お姉ちゃん、あなたのファンだったから…。でも、お姉ちゃんは…もう…っ」
悔しそうに歯噛みする志保ちゃんの目に、涙が溜まった
だから、私は彼女の肩にそっと手を置いた
椎奈「志保ちゃん、そのことなんだけどね…。あなたの姉・宮野明美さんは実は生きてるの」
灰原「嘘よ…っジンたちはお姉ちゃんを始末したって…!!」
椎奈「嘘じゃない」
灰原「…っ」
自分でも思った以上に抑揚のない声が出たと思う
衝動的に顔を上げた志保ちゃんも息を飲んだのがわかった
私は博士がそばに来てないのを確かめてから、小声で志保ちゃんに言う
椎奈「明日の朝、工藤邸に来て。紹介したい人とお姉さんからの預かりものがあるから」
もちろん、博士と新一には内緒で、と言って………
灰原「…分かったわ。筆跡を見れば、本物か偽物かはすぐに分かるし…」
椎奈「うん。じゃあ、その話は明日ね」