生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第20章 ハートに鎖(*)
セナはただ視線に捕らえられたように、ピクリとも動かなかった
そうして2人だけの生徒会室に、沈黙が流れる
扉を背に立つローの瞳には、不安げな表情のセナが映り込んでいた
お前を許さない、数時間前の逢瀬のときも確かに言われた言葉である
その言葉だけを述べて、ゆっくりと間合いを詰めてくるローから無意識に後ずさっていた
自分はなんて浅はかだったのだろうか
本気で許されるなどと、何故思ってしまったのだろう
「あ、っ?!」
詰め寄られるままに後ずさっていれば、膝裏がソファの肘掛け部分に当たり反動で後ろに倒れてしまった
応接用のフカフカとしたソファが、背中を包み込んだ
沈み込んだ反動も借りて慌てて起き上がろうとしたら、長い腕が伸びてきてそれを阻止した
再びソファに軽く沈んだ身体を挟むように、長い脚がソファに乗り掛かる
伸ばされた両腕は顔の横に置かれ、更に身動きは取れなくなってしまった
「ロー…」
真っ直ぐに見下ろしてくる表情は、何を考えているのか読むことができない
怒りも呆れもなく、ただ無感情
それはまるで目の前の存在に興味を無くしたようにも思えた
「わ、たし…ッ」
嫌われることよりも耐えられない恐怖が湧き上がってきて涙が溢れる
逃げようと身を捩ってソファから身を乗り出した
けれどすぐ側にあった腕に、軽々と押さえつけられると耳障りにソファが軋む
「ッ、なんで…」
「逃げんじゃねェ」
「ん、ぅッ」
涙で滲む視界いっぱいにローの顔があった
顎にチクリと感じた痛みは、彼がたくわえる顎髭だと気付く
それからようやく、自分はキスされているのだと脳が全身が理解した
無理やりねじ込まれた舌先が乱暴に口内を蹂躙する
乱れた呼吸さえ奪われて、さらには紡ぐ呼吸さえもままならなくて
本能的に酸素を求めて逃げようとすれば、口づけはより深まるばかり
「ふ、ぅンッ…ンン」
本気で意識を飛ばしかけた刹那、唇は解放され新鮮な空気が一気に肺を満たした
頭がクラクラする…どこかぼうっとした思考は、今しばらく正常には働いてくれないようだ
「どうし、て?」
ローの言葉の真意も、行動の理由もなにもかもが分からなくなった
許されはしない
けれど逃げることも許されない
口づけは全てを奪うように激しく、そして切なくて
「ねぇ、ロー」
「私の心臓を、取り出して」