生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第6章 焦がれる指先
「会長どうしたんすか?」
きょろきょろと辺りを見回す姿を不思議そうにシャチが問いかけてきた
昨日の今日なのだから、考えれば分かりそうなものだが何故かペンギンも同じように首を傾げて此方を見ている
「お前ら…2人だけか?」
見慣れた2人と一緒に来るはずだと思っていた、こいつらの幼馴染の姿がどうしたって見当たらない
普通に一緒に迎えに来るものだと思っていたのだが
「あっもしかしてセナ探してます…?」
「…ああ、一緒じゃないんだな」
性格上認める事は癪だが、隠すのもおかしな話なので素直に頷く
すると申し訳なさそうにしたペンギンが口を開いた
「セナのやつ、昔から朝が弱いんですよね。一応起こしには行ったんですが、多分また寝たんだと…」
「?両親は居ねェのか」
「セナの両親は2人とも朝早く出ちゃうんで、ずっと俺らが起こしてるんすよ」
来ていない理由は分かったが、2人の言い分だとどうしても気になることが出てきた
「起こすって…そんな簡単じゃねェだろ」
アラームで当然起きない人間が、電話を鳴らして起きるわけもなさそうだ
まさか家の前で大声で呼んでいるわけでもないだろう…
「まぁ大変ですけど、くすぐったりとかすれば」
「は?くすぐる…?」
「あとは…思いっきり揺さぶるとか」
「…お前らの家は繋がってんのか?」
家族ぐるみで仲が良いのだとすれば、そんな行き来もあり得るのかもしれない
だが真実は以外とあっさり解明された
「え、そんなわけ…合鍵ですよ?預かってるんです」
ほら、とペンギンの手のひらにはシロクマのキーホルダーが付いた鍵が乗せられていた
要するに幼い時から目覚まし役はこの2人に任されていたわけか
「…貸せ」
「ちょっ!会長?!」
「まさか起こしに行く気ですか?!ダメですよ、もう今からでもギリギリなのに」
思わず目の前の鍵を奪い取ると、学校とは逆方向に進んでいく
背後で慌てた声が引き留めようとするので、一度立ち止まり振り返る
「先に行っとけ。ついでにシャチは担任を上手く誤魔化しておけよ」
それだけを言い残して、再び歩みを進める
無駄だと分かったのか、今度は引き止める声も聞こえない
同時にメールの着信音が鳴る
差出人はペンギン
内容はセナの家への道順だった
よくよく考えれば、俺は家を知らない