生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第14章 星空は海に沈む
タタタッ
新しくなった校舎を、ローはひたすら走った
セナに会って、確かめたいことがたくさんある
珀鉛のこと
過去のこと
彼女は自分の立場を分かっているのだろうか
彼女はローのことを、知っていたのだろうか
「ックソ…」
数日前出会ったあの日、不安に潤んだ黒曜石のような瞳を見て
一瞬脳裏をよぎった星空のような瞳
唯一の少女の記憶と助けられなかった後悔を重ね合わせただけだと思っていた
保健室に辿り着けば、辺りはやけに静まり返っている
静かにドアを開くと、セナの姿を見つけた
チョッパーを膝の上に乗せて、楽しそうに談笑しているようだ
しかし何一つ音が聞こえない。これは…
「!」
パチンッ
「よぉ、ロー!戻ったか」
何故か一緒になって呑気にお茶を飲んでいたコラソンが、指を一度鳴らすと世界が音を取り戻す
サイレント
周囲の音を一切消せるこの技は、コラソンの食べたナギナギの実の能力だ
「コラさん…」
「どうした暗い顔をして」
「…悪い、俺が能力を使ったから」
能力を使えない学園内で、能力を使う生徒が出ないように
見張りとして、副学園長の身でありながら潜入していた
「んー?何のことだ?」
「ドフラミンゴがアンタを連れ戻すと伝えろと」
「ああ、それが約束だからな」
能力を解放した学園で、見張る必要のなくなったコラソンの役目は終わったことになる
どこか諦めたような、しかし清々しい笑みでコラソンが笑う
「そんな顔をするなよ、ロー。今生の別れじゃねェんだ」
「…」
「それに。俺よりも話さなきゃならない相手が居るんじゃないのか?」
コラソンが目の前にチラリと視線を送ると、静かに目を閉じた
これ以上は、何を言っても聞かないという態度を示されればローも言及をできなくなる
視線を送られたことに気付いたセナが、柔らかい笑みを浮かべてローを見上げた
「…おかえりなさい」
「…ただいま」
ローの返事に、みるみるセナの瞳に涙が溜まってゆく
涙が一滴、チョッパーの頭上に落ちた。何事かとセナを見上げる
「…セナ?」
「チョッパー、とっておきの綿菓子を隠してあるんだ。来るか?」
「ホントかコラソン?!行く行く〜!」
チョッパーはピョンッとセナの膝から飛び降りると、今度はコラソンの頭に乗っかった