第4章 欠落した記憶
部屋お披露目大会も終わり、その場で解散となった。各々の部屋に戻っていく中、麗日さんに呼び止められた緑谷くん、轟くん、飯田くん、切島くん、八百万さんはそのまま寮の外へと出て行った。…どうしたんだろう?あ、私も緑谷くんにあの事話さなきゃ。そう思い、皆が帰ってくるのを一人談話スペースに残っていると、寝起きなのか、欠伸を噛み締めた爆豪くんがやって来た。
「…何してんだよ?」
「えっと、緑谷くん待ってて…。」
緑谷くんの名前を出すと、眠たそうな表情は一変。鋭く尖った瞳は釣り上がり、怒ったような表情に。私、なんかマズイこと言った…?あ、でもそういえば今朝も緑谷くんが私の手を握っただけで凄く怒ってた。もしかしたら爆豪くんと緑谷くんは仲が悪いのかもしれない。
「記憶が無くなってもテメェはデク、デクって…!俺への当てつけか!」
壁を殴る爆豪くんの姿が恐ろしくて、肩が飛び跳ねた。
「ビクビクしやがってムカつくんだよ!」
そんな事言われたって、理由も分からず怒鳴られればビックリする。別に爆豪くんを腹立たせようと思った訳じゃない。じりじりと近付いてくる爆豪くんが怖い。でも、ソファーに腰を落としている私は逃げ場がない。それこそそこから立ち上がり逃げようものなら、再び爆豪くんの逆鱗に触れてしまう。私の目の前までやって来た爆豪くんはわたしのにが腰掛けるソファーの背もたれに両手を付き、私はその手によって完全に逃げ道を絶たれてしまった。