第5章 血の力
「理由はある。」
『……?』
「お前の血液を採取する理由だ。
お前達の血は、こちら側の世界に来た事で力を持つらしい。それがどんな力なのかを調べさせてもらう。」
『力……って?』
「悪魔の実の能力とはまた違うみてぇだが、身体的能力が上がる奴もいるし、そいつの血を直接口に含む事で怪我を治したり、毒を浄化したり……一人一人力は異なると言っていた。」
カナエはどこか他人事に聞こえた。今、倦怠感以外は自分の体に何も変化は感じない。
「よし……もう良いだろう」
採血が終わった。
カナエはふとローに目を向けると、こちらをじっと見つめていた。
「……さっきの傷」
『あ……』
そういえば、ローに当てられた刀で首筋を切っていた。まだ血が滲んでいる。
カナエの考えの無い行動が原因だったので、自業自得なのだが。
「悪かったな。」
『いえ……そんな……私のせいなので……』
素直に謝るローに、カナエは少し戸惑った。さっきまで失礼な奴だと思っていたのに。
(何か、私が知ってるローとはイメージが違うな……。もっとプライドの高い人だと……)
たいした事無い傷だったが、手当てをしてくれようとしている。
(優しいな…)
準備が出来たらしく、ローが首に触れてきた。
「……その血の力……」
『え?』
「どんな力なのか……俺が直接舐めればすぐに分かるかもしれねェな。」
ローは不適な笑みを浮かべて、カナエの首筋に顔を近づけてきた。
『えっ…ちょっ……待っ……!!』
カナエは必死に抵抗したがローはびくともしない。
それなりに男性の経験はしてきたが、突然の出来事にカナエは顔が真っ赤になる。
(誰か助けて~!はっ!ベポは!?)
カナエは部屋を見回すが誰もいない。
「ベポならさっき出ていったぞ」
(何でこんな時に!!)
「悪いようにはしねェよ…」
ローが耳元で囁く。
(……っ!!良い声過ぎる…頭おかしくなりそう…ってか、こんなイケメンに免疫力無いんですけどっっ!どうしよー!!)
『やっ…やめてくださ……!』
ローが首筋を舐めようとした、まさにその時だった。
「船長ー!!今ベポから聞いたんスけど女の子いるんですかー!!??」
勢い良くドアが空いて、船員達が雪崩れ込んで来た。