第15章 しない。切ない。
「カナエに手ェ出すんじゃねェ!」
珍しくペンギンが怒っている。
シュルティは何とか腕を離そうともがいているが、びくともしない。
「何なのよ!あんた達、頭おかしいんじゃないの!?」
すると、ローがシュルティに近づき、彼女を見下ろした。
「このちび女の事をお前に分かって貰おうとは思わねェ。………だが……」
「!!!」
ローの鋭い眼光が彼女の動きを止める。
「これ以上こいつを馬鹿にするなら、お前らの船は沈む事になるぞ。」
『船長さん………』
「そんなっ……!私達の仲じゃない!!その女の為にそこまでするって言うの………?」
「………………………俺を誰だと思っている。」
「ひっ!!!」
シュルティは凍りついた。
目の前にいるのは、先程まで笑いを堪えて機嫌が良かった男では無い。
冷酷で残忍な、懸賞金2億ベリーの死の外科医トラファルガー・ローだった。
「お前ら今夜は大人しくしてろよー」
そう言ったシャチを最後に、ハートの海賊団は潜水艇に戻った。
カナエはパーティーを台無しにしてしまった事を船員達に詫びたが、元々シュルティを好意的に思っていなかった彼等は、カナエに称賛を浴びせてきた。
「胸がスカッとしたぞ!」
「海賊船に乗ってるなら、あれくらいじゃないとな!」
『あんまり嬉しくないけど………』
と、言いつつも笑顔のカナエ。
「俺は飲み直すぞー!ペンギン!付き合えよ!」
「オッケー。船長はどうします?カナエは?」
「俺はいい。部屋に戻る。」
『私ももう寝るね。あんなに誰かと喧嘩するの初めてだから疲れちゃった………』
その他大勢の船員もシャチとペンギンを残し部屋に戻った。
『船長さん………あの………』
「なんだ。」
誰もが忘れているかもしれないが、カナエとローの部屋は隣。それぞれ自室に入る前に、カナエは気になっていた事を聞かずにはいられなかった。
『シュルティさんが言ってた……その……キスしないってのは本当ですか。』
「あァ。俺はヤルだけの女とはしない。」
(またそんな当たり前の様に言う………)
「………………………で?」
『あ………えっと………』
カナエにはしようとしていた。だが、何故なのか聞くのも自意識過剰の様で気が引ける。