第12章 覚悟しろ。
「話…………?」
ローは、立ち上がれないカルロの前にしゃがみこんだ。
「てめェは……話をするだけの相手とキスをするのか?」
「いやっあのっ……」
全て見られていた。もう言い逃れはできない。
ローはカルロの首に刀を突き付けた。
「ひぃぃ!!!」
「今度うちの船員に手ェ出したら……
命は無いと思え。」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!
すいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
カルロは目にも止まらぬ早さで逃げて行った。
『……船長さん……ご迷惑お掛けしました』
「……お前は隙がありすぎる。」
『……え。』
「そんな気の抜けた面して、誰にでも笑ってるから付け込まれるんだ」
『何ですかそれ。』
カナエは喧嘩腰に言った。
普段は、人にそんな態度はとらない。しかし、ローの見下す様な態度に腹が立つ。
『確かにカルロは見ず知らずの赤の他人でしたけど、そうだからこそ自分の世界が広がるみたいで楽しいじゃないですか。』
「別に会話をするなと言ってる訳じゃない。誰にでも愛想を振り撒くなって事だ。」
『そんな媚びへつらってる様な言い方しないで下さい。』
「違うか?それとも、男に気を持たせて、襲わせるのがお前の世界の広げかたか。」
『そんな事!!!………………』
そんなつもりは無くても、実際に襲われそうになったカナエは何も言い返せない。
しかし今までも、カナエの職場であるレストランのお客や、先程の様に居酒屋で出会った人と会話をして、物事の見方や考えを勉強してきた。それは男女問わず。初対面だからこそ話せる事もある。下心がある様なつもりは無い。
「そんなに男に襲われてェんなら娼婦にでもなれ。」
『なっ……!!』
「まァ、その体で客が取れるかどうかは知らねェがな。」
カナエは今まで感じた事の無い程の怒りが込み上げて来た。
『船長さんに私の何が分かるんですか!!
ずっと同じ仲間としか一緒にいない人に言われたくない!!』
カナエは怒りで我を忘れている。
どこかの大きな蟲のようだ。