第11章 違う。
カナエは、店を出たあとローと別行動を取り、女性特有の必要なものを買い出しに行った。
(さすがにローの前では買えない…。これだけあれば大丈夫かな。)
またしても両手いっぱいになってしまった荷物を持って、船に帰った。もう、空は暗い。
「カナエさ~ん!お帰り~!」
『シャチ!遅くなってごめんね!手伝ってくれる?』
「任せろ!早く片付けて、飲みに行こうぜ!さっき良い店見つけたから!」
『わぉ!楽しみっ!』
「船長が先に行ってろって言うから、片付け終わったら出発な!」
船員2、3はジャンケンに負けて船番をする事になり、残りのメンバーで酒場に向かった。
ペンギンがじっとカナエを見ている。
「カナエは着替えて来たんだな。」
『うん。つなぎが大き過ぎてさ。』
カナエは少しふんわりしたデザインの白のトップスに、細身のジーンズをロールアップして履いて、グレーのロングカーディガンを羽織っている。非常にシンプルな格好だ。
『もうちょっと可愛い服買えば良かったー』
「いや。カナエさん!チラリと見える鎖骨がセクシーだ!」
『うっさい。シャチ。』
シャチはカナエに殴られた。
「何と言うか……ホントに細ェんだな。つなぎじゃ分からなかった。」
『何…ペンギンくんまで…』
「カナエさん!守ってあげたいっ!!」
『うっさい!シャチ!』
シャチはまた殴られた。
「もー、皆何してるのー!着いたよ!」
くだらない会話をしている内に店に着いた。
入ってみると結構広く、テーブル席がいくつもあり、カウンター席もあった。照明は薄暗くしてあり、モダンな古民家風の内装。
『シャチやるじゃん!こういうの好き。』
「だろ~。見直した?」
(女の子がいるって言ってたから、てっきりキャバクラみたいな所かと思ってたけど……女性客もいるんだな。普通の居酒屋みたい…)
「シャチと仲間たち様の席はこちらです」
『何その名前……』
「引くわ~」
「キャプテンに怒られそう……」
「なんだよ!カッコいいだろ!」
カナエ達は、奥の方に予約してあった大きなソファがあるテーブル席に案内された。