第34章 そんな気分じゃない。
離れている間の事とは言え、
他の女を抱いて、汗を滲ませているローの姿は考えたくない。
(しょうがない。男なんだから。)
無理矢理自分を納得させようとしていた。
だが。
「……もう、挿れるぞ。」
ローが何だか焦り始めた。
我慢の限界、そんな感じだ。
(ああ、もう。……どうでも良いや……。)
こんなに必死な様子を見たら、現地妻の事なんてどうでも良くなる。
" 今 "。
自分を求めてくれている。
それが、" 今 "のローの気持ち。
過去は過去。
目の前にいる、ローが全て。
しかし、カナエには譲れない事があるので、その我が儘は聞いて貰おう。
『このベッドはチョッパーがたまに使ってる筈だから……ここはちょっと……。』
「…………しょうがねェな。」
舌打ちをしながら、ローはカナエを抱き抱えた。
何故そんなに麦わら屋達に入れ込んでいるのかと聞かれたが、
私の青春だから、とカナエは簡潔に説明した。
ローはカナエを抱いたまま、ベッドのすぐ横の床に座って、壁にもたれ掛かった。
『ロー……!私が下で良いよ……。』
移動したのはカナエの都合だ。
これではローが床の冷たさを感じてしまう。
「気にするんじゃねェ。……良い眺めだ。」
この体勢はカナエが動かなければならない。
その姿をまじまじと見るつもりだろうか。
『……いや、あの、恥ずかしいです……。』
「いいから、早くしろ。」
『…………ん。』
カナエが少し腰を浮かせると、ローはジーンズの中で窮屈に隠れていた自身を手に取った。
カナエは、自分の中にそれを導く。
『んっ……!』
「…………はぁ……!」
ローが、今までのどんな時よりも
大きく、猛々しく、熱く脈打っているのを感じた。
見た事がない程の激しい息遣いが、
彼の胸の高鳴りを表しているようだ。
ローはカナエをじっと見つめている。
カナエもローから目を逸らさなかった。
離れていた時間を取り戻す事は出来ない。
だが、そんな事は忘れてしまえる程
二人は激しく身体を重ねた。
今、一緒にいる。
同じ" 現実 "にいる事を、互いに確かめ合った。
カナエは、元の世界には絶対に帰らないと
自分と約束した。