第27章 忘れてました。
「スズキ、俺が何でここにいると思う?」
『えっと……?』
シャボンディ諸島で自分達は何とか逃れたが、麦わらの一味は本物のバーソロミュー・くまの手によって完全崩壊。
皆バラバラに、どこにあるかも分からない未知の島へと飛ばれてしまう。
あれから1週間は経っているが、トミダがシャボンディ諸島辺りにいるのは何故だろうか。
『トミダさんも、どこかに飛ばされたんですか?近場だったとか?』
「いや……俺、1回死んだんだよ。」
『………え!?いつ!?』
「シャボンディ諸島で、最後にルフィが飛ばされる前。」
黄猿、戦桃丸、パシフィスタ。
強敵を前に、既にボロボロだった麦わらの一味は成す術が無かった。
そこへ現れたバーソロミュー・くま。
次々と仲間を消され、最後にルフィとトミダが残った。
分かってはいた。
だが、仲間達の助けを求める顔、取り乱したルフィにトミダも冷静でいられなくなり、思わず大丈夫だから、と言いかけた時だった。
『じゃあ今、幽霊?』
「そこまで何でも有りじゃない。死んだと思ったら元の世界に戻ってて、またこっちに来たんだ。今度はシャボンディ諸島で目が覚めた。」
『充分何でも有りじゃないですか!何その
トリップ物あるある!!』
「そんなもんだ。……じゃなくて、スズキはクロッカスさんに会ったか?」
『会って無いです。こっちに来たのは最近なんで……』
「じゃあ何も知らないんだな。………来て良かったよ。」
どんなに仕事が忙しくてもへらへら笑っているトミダが、真剣な顔をしていた。
『トミダさん?』
「いいか?良く聞けよ?俺が死んだのは……
………………………はっ!!」
『?』
「殺気!!」
トミダが慌てた様子で振り返ると同時に
カナエの視界が暗くなり、何かが顔を覆っていた。薬品混じりのこの匂いは。
『ん?ロー?』
チャキッ……と、刀の音がした。トミダの震える情けない声もする。
「俺、何かした!?」
「貴様……俺の女に何を吹き込んでる。」