第1章 エラー
敵にあっという間に囲まれ、僕たちは身動きができなくなった。
「お?お前は橘じゃねえか」
「このロボット君とオアソビかぁ?」
汚い笑い声が聞こえる。
頭に響くエラー音がうるさい。
「お前には何人俺たちの仲間がやられたことか…」
「いい機会だなあ、ここで敵討ちをさせていただこうか」
一人が銃を彼女に向けた。
彼女は顔をそらし、目をぎゅっとつぶった。
エラー音の音量が最大になった。
パァン
気づけば彼女は僕の腕の中にいた。
驚いたような顔で僕を見つめる彼女の顔には、いつものような笑顔はなかった。
動きの鈍くなった腕を動かし、敵の心臓めがけて銃を撃ちまくる。
敵が全滅してもなお、エラー音は鳴り止まない。
彼女は必死な形相で僕を揺さぶった。
「君の家族になれたら、もっと幸せだったんだろうな」
ふと、口からこぼれたこの言葉に驚く。
やっぱりこれは恋だったんだ。
人を傷つけて勝利に導くことを目的に作られた、軍事用ロボットなのに。
銃弾なんて、今まで当たったことなんてなかったのに。
自分を守ることはできなかったが、大切な人を守ることはできた。
守るべきものができると、弱くなるが、強くもなれると言った彼女の言葉が、
エラー音とともに頭の中を巡っていた。