第35章 及川/屋上の彼女*イベント小説
私はいつも屋上にいる、
授業中も、昼休みも…
帰る時間になるまで屋上にいる。
「人なんて嫌いだ。」
私はこんな奴だ。
*
今日も、下駄箱に靴を放り込むと
足早に屋上へ向かう。
鞄の中身は画材道具と
スマホとバッテリー2本とお茶。
教科書なんて持ってこないし、
だいたい勉強なんてしない。
屋上に着くと、ごろりと寝そべる。
1時限目のチャイムがなっても
寝そべって、何をしようか考えていた。
*
3時限目終わりのチャイム。
私は絵を描いていた。
(あぁ、つまらない…)
絵を描くのも飽き始め、とうとう
する事がなくなり呆然としていると、
ガチャリと 扉が開く音がする。
「誰…?」
ぼそりと呟く。私は人間が嫌いだ。
「はぁ〜ぁ…もう 無理
授業とかやる気出ないわ〜…ん?
あれ、可愛い〜!なになに?
なんでこんなとこいんの〜?」
なんだかチャラチャラしたヤツが
入ってきた。
(なんだコイツ…)
「誰だお前」
ジーッと睨んでいると、えぇっ?!
と驚き後退りをする。
「お…オレの事知らないの?!」
「知らないよ 誰だお前!」
ムスッとしていると、嘘だ嘘だ と
慌て出す。 奴は及川徹といって
学校中の女子達の人気者らしい。
「へぇ…知らないね 私
ずっと屋上にいるし、友達おらんし」
興味なさげに軽く流す。
呆然とする及川徹は私の隣に座る。
「なんだよ…近づくな…」
「友達おらんなら 俺が友達になるよ?」
微笑む及川徹は、勝ち誇ったような
瞳でこちらを見つめる。
「……気持ちの悪い、どうせ
私と一緒にいたくないって
そのうち言い出すぞ」
そんな事ない!と騒ぎ出す及川徹を
無視して、私は寝そべった。
*
あれから奴は毎日くる。絶対くる。
内心、許してしまっている所もあり、
心開いている所もあり。
絵も褒められ、悩みも聞いてもらっている。
(ヤツになにかできないか…)
そんな風に思うほど進展していた。
「やっほー 名前ちゃんっ…」
相変わらずのテンションだ。
振り返ると、明らかに顔が赤く
様子の可笑しい及川徹が立っていた。
「どーした 及川…具合が悪そうだ…」
「だからぁ…先輩つけなさいって…はぁ…」
なんだコイツ…気味が悪い…。