第4章 一松
カラ松兄ちゃんが剥いてくれた
梨を皆で食べていた。
美味しさに十四松兄ちゃんは
テンションが上がり
トド松兄ちゃんが
楽しそうに連写していたり
人の分まで取ろうとする
おそ松兄ちゃんを正すように
チョロ松兄ちゃんが叱った。
一松兄ちゃんはなかなか
手に取ろうとしなくて
何度かおそ松兄ちゃんが
食べようとして殴られていた。
カラ松兄ちゃんに…。
そんなカラ松兄ちゃんも
梨を食べようとはしなかった。
罰として買った物を
罪深き俺が食すなど…と
言ってた気がするけど
『死ね、クソ松。』
の言葉と共に梨を口に
つっこまれていた。どんまい…
私にとって六つ子の兄達は
人生においての主人公だ。
私はただその日常を客席か
なにかのところで眺めている
それだけで幸せなのだ。
入り込みたい訳じゃない
入って壊すよりもただ…ただ、
見守っていたいのだ。
『莉瑠ーっ!!!
梨すんげぇうんまいよー!!!』
そんな私の考えなど吹き飛ばし
六つ子の隣に座らせてくれる
十四松兄ちゃんの輝かしい笑顔。
『とっても甘いねぇ、
十四松兄ちゃん…。』
此処に居るのだと確認するように
名を呼べばまた、微笑んでくれた。
決して客席では見せてくれない。
あえて隣で傍で一緒に居てくれる。
私は六つ子の兄達の妹であると
再認識するように…時は流れてゆく。
疲れていたのだ、私は。
いろんなことがありすぎて
いろんなことを抱えすぎて
きっと限界が来ていたのだ。
その日の夜の眠りはとても
とても深く眠りについていた。
夢も幻も現実も全てが闇に
溶け込ませるように眠った。
おそ松兄ちゃんに言われた
"寝込み襲われちゃうよ。"
その言葉を忘れてしまっていた。
だから…
闇夜に忍び寄る影に気付けなかった。