第73章 本 丸 に 迫 る 影
その瞬間、蛍丸が一言呟いた
蛍丸「ねぇ、後は俺に任せてくれない?」
前任「やる気だな…まぁいいよ。後は任せるよ。じゃあ俺は審神者部屋に居るからお前らも部屋に戻って」
その言葉に三日月はそっと刀を鞘にしまえば部屋へと戻っていった
そして他の刀剣達も前任に言われるがまま部屋へと帰って行った
皆が居なくなり、蛍丸と二人になった空間
私は蛍丸を見つめた
『蛍丸…?』
名前を呼べば、蛍丸は床に膝を付き私をぎゅっと抱きしめてきた
蛍丸「主…怪我がなくて良かった…」
蛍丸のその言葉に、私は再び涙が溢れた
『えっ…蛍丸…今、主って…』
蛍丸「俺の主は主だけだよ?今ね、前任が持つ神力の力で皆操られてるんだ。だから主はここから逃げて…」
『蛍丸…、蛍丸は?操られてないの?なら蛍丸を置いては行けないよ…!』
蛍丸「俺は大丈夫だから…ね?」
『やだ…やだよ…蛍丸も一緒に逃げよう?私と一緒にっ…主命だから…お願いっ…』
泣きながら悲願すれば、蛍丸はいつもの笑みを浮かべながら私の目を見た
蛍丸「もう、分かったよ。じゃあ早く、今の内に」
そう言って蛍丸と共に立ち上がり、庭へと出て本丸の入口の門付近へ行こうとすれば、嫌な声が聞こえた
前任「どこ行くの?」
『………!』
蛍丸「主、下がって…!」
前任の姿に、蛍丸は私を背に隠すように守ってくれる
その姿が気に食わなかったのか前任は小さいナイフを取り出した
前任「逃がすもんか…お前らはここで殺す」
前任はその言葉と共に手に持っていたナイフを2本こちらに向けて勢いよく投げた
『きゃっ…!!』
蛍丸「主は俺がっ…!」
蛍丸は私をかばうように立てば、そのナイフは蛍丸の腕と頬をかすり傷をつけた
蛍丸「っ…いった…」
『蛍丸…!?大丈夫!?』
蛍丸の傷を見れば、運が良かったのか少しのかすり傷で済んだようだった
そんな庭の騒がしさに、部屋に戻った刀剣達が再び現れた
蛍丸「っ…主、早く…!!!」
『う、うん…!!!』
私は蛍丸に手を引かれながら、殺られる前に本丸の外へと脱出した
岩融「逃がすな…!」
前任「いや、もういい。この本丸から邪魔が消えたんだ、これでいい」
その言葉に刀剣達は少しモヤッとした気持ちになった