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【ツキウタ。】Legend of Moon Princess

第1章 出会い


「あれ……君、迷ったのかい?」

「ふぇいっ!?」

迷っている花奈にとっては、神の声といっても等しかった。

自分の見知った事務所ではないここで、この事務所の社長に呼ばれているのだが迷っていたのだった。
もちろん受付でアポイントの件を伝え、フロアも確認したのだが……。

びっくりして振り向く花奈は、さらにビックリした顔をさらす羽目になったのだ。


(睦月……始と、霜月……隼!)

「ふふ、すごい声が聞こえたね。どこに行きたいんだい?」

妖しいという形容が似合うその含み笑いとは裏腹に、彼、霜月隼は親切な言葉をかける。

「えっと、こちらの社長にアポとってて。
社長室に行きたいんです」

「へえ……僕たちも実は社長に呼ばれてるんだ。
一緒に行こうか? ねえ、始」

「ああ」

「ありがとうございます!」

「いやいや、こんな可愛い女の子のためなら」

「へっ女!?」

またも、素っ頓狂な声を出した花奈。

(ま、まさか、この男装ばれてる!?)

「お、俺男ですけど……」

少し目を見開く仕草をする隼。
果たして本当に驚いているのかどうか、真意は読み取れない。


「その華奢な身体と高い声で、女の子じゃないんだって。
……びっくりだねぇ、始」

その隼の反応に始はため息をつき。

「その、いつも俺に振るの、そろそろやめないか?
 お前……ええと」

「あ、タクトです」

「タクト。社長室に用があるんだろう? 行くぞ」

「……はいっ」

踵を返す始に、花奈はついていくのであった。

「あらら……従順な子犬ちゃんみたいだね」

クスクスと、後ろで笑い声が聞こえていた。
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