第1章 出会い

「Diva……良いよねーっ！　超歌上手いし！透明感ある声だし！」

「うんうん、すっごい音域広いし、男の声も女の声も出せるし！
　でもでもっ何よりも……」

「やっぱそうだよね！？」

「「顔がわかんないからこそ、ミステリアスで超ステキ！！！！！」」





21世紀、日本。
今日の歌手事情は、Divaの登場で大きく揺らいだ。


顔を一切出さない正体不明の歌手。
歌番組などは出演せず、CDの販売のみ。
それだけで話題性があった。
しかしそれだけではない、相応の実力を伴っていた。
瞬く間に有名になり、中高生はもちろん、大人からも話題をかっさらっていった。

CDも、CD氷河期と言われる中、文字通りバカ売れ。
【正体不明の歌手、Divaの謎を暴け！】なんていう、ワイドショーの特集まで組まれるようになった。


年齢もわからない。
出身もわからない。
男か、女かすらもわからない。



そんな彼(彼女？)の話題でもちきりなのは、
ここ、グラビとプロセラの寮も例外ではなかった――。