【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第1章 兵庫水軍との邂逅
「―麻言さん、今日は有難うございました~っ!」
「麻言さんっ、第三協栄丸さんっ、まったね~」
「また、美味しい魚待ってます~」
乱太郎、きり丸、しんベエ。
忍たま三人の姿を見送る麻言が
「こっちこそ有難う、気をつけてね~っ!」
と笑顔で手を振った。
三人の姿が見えなくなると
「麻言」と後ろにいた第三協栄丸が呼んだ。
「?どうしました」
麻言が小首を傾げると、
第三協栄丸が周囲を見回した後すっと耳打ちする。
「あのな、その、記憶喪失の事なんだが…
お前もうっかり話した事は何となく解ってるから、
あんまりガミガミ言わないが、なるべく外部に漏らさない様にな」
たまにそういうのを目ざとく気にするような奴もいるかよっと
第三協栄丸が忠告すると、苦笑しながら
「はい、気をつけます」と素直に頷いた。
「それから―、お前さんの…その老夫婦の件だが…。
俺等は一応海路から情報を得る様に働き掛けてみる。
だが何せ陸の事だからな。正直期待できん。
そう思って、その道の専業に頼むことにした…!」
「えっ…!だ、第三協栄丸さん…」
いつの間にそんな事まで。
しかし、実はその事について麻言は気にかかっていた。
ここで急に働かせて貰う事に決まったが、
その間二人はどうやって探せばいいのだろう…と。
「そんな…、何度も言いますけど昨日、
今日会っただけなのにこんな事までしてもらって…」
僕はどうしたら―そう言いかけると。
「―何言ってんだ。もう仲間だろ、だったらいいじゃねえか」
第三協栄丸は笑顔を向けた。
それを聞いて、麻言は目を見開く。
そして、その瞳にじわりと涙の玉が溢れて―落ちた。
記憶喪失。
麻言がそうなってから、流した初めての涙だった。