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【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】

第1章 兵庫水軍との邂逅



―そしてその夜がやってきた。
婆様は言い出した。

「麻言や」

妙に声が上機嫌だったので、麻言は嫌な予感がした。

「お、お婆さん…どうしたの?」

内心、冷や汗ものだったが、恐る恐るそう聞くと

「いやあ、実はの…今日町でお前さんに
興味があると言う男がおってねぇ…」
「『実際に会ってみたい』とその者は言うとったぞ。
―だがここまで来るのに、
人の目が気になるから町の方まで来て欲しいそうじゃ」

婆様の言葉を爺様が引き継いだ。
だが、そこで急に「う~ん」と婆様が渋るような声を出す。

「しかし、興味があるって言いながら自分で来んとは…
まあ、この辺は田舎じゃし確かに人の目は気になるが、
この子を町へ連れてったら、目的の相手だけでなく他の
ろくでもない男まで手を出してきそうでなぁ」

ブツブツと呟く婆様の声は二人には聞こえてなかった。

「なあ、婆さん。でも、きちんと二人で会って話せば
きっとその後も良い関係を築けると思うんじゃが。どうかのう?」
「…そうじゃのう。じゃあ、こっそりと
人気のない所で会わせてみるかのう」

爺様の言葉にそう渋々であったが、婆様は了承した。

「―麻言も」

爺様の声にはと顔を上げた。

「…本当にそれで、いいんじゃね?」

じっくりとした問いかけだった。
これから言う言葉を一つでも聞き逃さないという様に。

「―…うん、そうだね。会ってみるのも、いいかもしれない」

麻言がそう言うと、二人は頷いた。

それから、明日例の男にそのような手筈でと伝えてくると
言って二人はまた早めに就寝した。


その後一人暗い居間に残って、ずっと麻言は俯いていた。

ああ、駄目だ何をしているんだろう。

自分は空っぽの筈なのに、心が闇で一杯になるような感覚。

とても、気分が悪い。

それなのにこの気持ちが何なのか解らず、苦しくて仕方ない。



―何となく、今は…ここに居たくない。


麻言には妙な焦りと不安が募っていた。
そして今日の話で麻言は完全に動転してしまった。
だが、爺様も婆様も気づかなかった。
麻言は表情があまり顔にでない。




麻言が勢いのまま家を後にしたのは。
その夜中だった。


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