【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第2章 忍術学園での邂逅【幼虫編】
第十二話「水軍達との日常と心情【前編】」
重の話「字の先生」
桜の季節は気付けば終わりを迎えていた。
あの山賊騒動から、もう一週間は経過しようとしている。
そうそう、山賊共の事だが麻言達を襲撃(しゅうげき)した日の翌日。
つまりは、忍術学園の方々が麻言の元へと一斉に訪れた日になるわけだが。
忍術学園の学園長先生が忍たまの六年生数名に命じ、全員捕えられたそうだ。
それは後日お頭から、忍術学園から届いた手紙の内容で伝えられて知った。
しかし、危なかった。
兵庫水軍の何人かは、麻言を傷つけた山賊共に対し腹に据え兼ねて危なく殴り込みに行くところだったのだ。
――と、いうのかその中に俺も含まれているわけだが。
はっきりいえば、敵(かたき)を俺達が取りたかったので、お頭から話を聞いた時は正直拍子抜け半分、残念な気持ち半分ではあった。
お頭に背負われて、ぐったりとしていた麻言を見た時は。
言い難い怒りと、悲しみがないまぜになり胸が苦しい程だった。
「――うーん、重……っ、この字はなんて読むの?」
俺は、はっと我に返った。
"重"と麻言が呼ぶようになったのは、つい最近の事。
白南風丸を筆頭に同世代の仲間へ"君"付けで呼ばなくなっていく麻言を見て。
俺もそうして欲しいと直に頼んだのだ。
「えっと、どれだ?」
「ごめんね、何回も。この字なんだけど……」
そう言って目の前にいる麻言は、困ったように呻っている。
彼女は片手の手紙とにらみ合いをしながら、もう片方に筆を持っていた。
ちなみに何をしているのかと言うと、今俺と麻言は水軍館の縁側で字の勉強をしていた。
否、正しくは麻言だけか。ちなみに俺は柄にもなく字を教える先生になっている。
「それは"じゅつ"と読む」
「じゅつ……か、有難うっ」
そう言って、床に広げていた紙に漢字と読みを書き入れる。
忍術学園の"術"。彼女が今手にしている手紙は忍術学園から届いたものだ。
文字の例文として、お頭が貸してくれたそうだ。