【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第2章 忍術学園での邂逅【幼虫編】
第十一話「彼女の事」
第三協栄丸は兵庫水軍達に語りながら回想していた。
それは先程、鉢屋三郎と第三協栄丸が山賊達を退け、共に兵庫水軍の海へ急ぐ途中の事だ。
すっかり暗くなってしまった夜の森で暫く二人は無言だった。
第三協栄丸に背負われた麻言は気絶したまま起きる気配はない。
代わる代わる気遣うように、二人で麻言を見ていたが
「第三協栄丸さん」
数歩前を征く彼を、呼ぶとすぐに「どうした?」と尋ねられる。
そして痺れを切らしたように、三郎が切り出したのだ。
「何故、何も聞かないんですか?
……あの場に私が居たわけぐらい、貴方なら解っているでしょう」
探るような問いかけだった。
先程、自分自身があの場にいたわけを話すと言っていた。
しかし、思ったのだ。
忍術学園の高学年で、腕にも自信のある三郎。
その彼が偶然あの場にいた事は不自然である事ぐらい、第三協栄丸という男でも解るはずだと。
一瞬第三協栄丸は立ち止まりかけたが、ふうと溜息を付くと
「正直言えば、なんとなぁくは解るよ。君があの場にいた理由は。
――でも、三郎君。君は俺が信頼している忍術学園の生徒なんだ。
滅多なことは口に出したくない」
「よく、そんな事が言えますね」
今までの話を全て聞いていた相手の、その返しは普通なら嫌味と取れるだろう。
"そういう貴方もその娘に疑いをかけたくちだろう?"と。
しかし、第三協栄丸は苦笑しただけだった。
そう言った三郎本人はというと自嘲気味に笑っている。