【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第2章 忍術学園での邂逅【幼虫編】
時は少し遡り、兵庫水軍の海にて。
一仕事を終えた舳丸は夕食の為、水軍館の方へと足を運んでいた。
確か今日は今晩も鬼蜘蛛丸の兄貴が飯当番だったな。
昼間もそうであったが、実は皆暫く食事を作ってなかった鬼蜘蛛丸の料理の感が鈍ってやしないかと心配していたが、それは食べてすぐ杞憂であった事が解った。
久々の鬼蜘蛛丸の兄貴の料理――か。
こうしていると、まるであの娘が来るまでの兵庫水軍のようだ。
だが、顔を見なければ見ないで不思議なもんだなとも思う。
それ程に彼女は急速に兵庫水軍の中に溶け込んでいったからだ。
同じ水練の重なんて何か理由がなくても、最近はよく一緒にいる姿を見るくらいだ。
その点舳丸は不器用な男であった。
そしてそれ故、初対面で麻言に対し疑いの目を向けてしまったその日以降。
自分が彼女へどういう目を向ければ良いのか解らないのだ。
他の皆は、何故あんなにころりと態度を変えられるのだろう。
罪悪感から、彼はそれができない。
どうしたら……いいんだろうな、一体。
ぼうっと考えながら歩いていたら、偶然にも麻言の家の前にいた。
この家は前に水軍を抜けた物が置いていった家屋を修理し、麻言の為に改装したのだ。
まさか、まだ帰ってはいないよな?
そう思って、舳丸はそっと入り口から中の様子を伺うと。
「……なっ!」
思わず声を上げた。居間の方に麻言の刀が置いてある。
何で置いてってるんだ。
というか、何でこんな所に置いてあるんだ。
不用心にも程があると思い、眉間に皺を寄せて舳丸が上がり込むと。
かちんっと金属同士が触れ合うような音が聞こえた。
?……何だいまのは。
そう思いながら、刀の方をじっくり見ると舳丸の目が見開かれた。
麻言の刀が、ひとりでに鍔鳴りを起こしているのだ。
それも何度も何度も。
何処かで聞いたことがある。鍔鳴りをひとりでに起こす刀は『妖刀』であると。
鍔鳴りはその間どんどん激しさを増した。
どうするべきかと、舳丸がその刀を持ち上げた時だった。
刀が一際大きくきんっと鍔鳴りを起こした瞬間、その全体の輪郭がぶれだした。
「なっ、何だ……っ!?」
何が起きて――そう言い終わる前に、舳丸は両手に刀の重みがない事に気付く。
驚愕に見開かれた目のまま、舳丸は腰を抜かすように、その場に座り込んだ。
