第4章 新しい一歩を
また泣いてしまう。大人げないなぁ、私。
そんな様子の私を見て、茜はふっと笑って
「野次馬達には凪は熱があるから少し突飛なことをしただけだって言っといた。」
と、私の頭に手を乗せ、グシャグシャと撫でた。
撫でられながら俯いて、
「...キス、急にしてごめん..」
ボソッと謝った。俯いて居たから表情はわからなかったけど、相手が怒っていないのは雰囲気でわかった。
茜は意地悪な声で、耳元に顔を近づけこう言った
「じゃあ..お詫びにちゃんとしたキスをしてくれたら許してあげる」
「っは!?ここ保健室だよ!?」
お前だって廊下でしたじゃん今日、と言い返され、返す言葉がなかったので、茜を睨んでから柔らかそうな唇に触れるか触れないかのキスをした、のだが、
「んぅっ!?」
頭を後ろから掴まれぐっと押してきたのだ、相手は涼しい顔でもっと深いキスをしてくる。当然驚いて戸惑う私を見て、少し口を離してこういった。
「俺にあわせて、」
そう言うとまた唇をつけ、今度は舌を入れて、私の舌に絡ませてきた。
合わせるってどうやって..!!
と思いながら必死に舌を動かした。
「..んっ..っふ...んぁ...っ」
少し苦しくなって声が漏れ、相手の裾を引っ張って離せ、とアピールして、やっと口を離してもらい、呼吸を整えていると、
「ごめ、ついやり過ぎた、まぁこれもお詫びの一つってことで」
「..絶対、熱、移してやった、から」
とろんとした意識のなかで、あまり口が回らない中反論したせいで言葉が途切れ途切れになってしまい、
「上等だ、移せるもんなら移してみろ」
ニヤニヤと笑いながら馬鹿にする茜に何か言ってやろうとしたとき、
パタパタと足音を鳴らして保健室に向かってくる音が聞こえ、お互い慌てて身なりを整えた。
ガラガラ
「お母さんが迎えに来るってー荒瀬さーん、あら、栗原くんもいたの?」
「ああ、荷物を届けに来まして、先生今日もお綺麗ですねー」
「あらま栗原くんてばお世辞が上手なんだからぁ」
うふふ、と笑う先生と、しばらく会話が続いたあと、
「じゃ、俺もう帰りますねー、荒瀬も早くなおせよー」
「はーい、気をつけて帰ってねー」
じゃあお母さんが来るまで待っていてね、と自分のデスクに戻る先生をみて、静かになった部屋の中で、ぽーっと景色を眺めていた。