第5章 踏み出したいのに
…これは断ったら今後の学校生活に大きな支障をきたすかもしれない。仕方ない…、と
「…茜、悪いけど先に帰ってて、」
「え?この状況で?てかお前こいつ誰だ…」
「後で説明するから今は空気読んで帰って」
男だからなのか、なにも知らないからなのか、なかなか帰ろうとしない茜にムカついてピシャリと言って、大人しく帰る茜を見届けてから陽斗に向き合って、
「分かった、一緒に帰ってあげる」
と言うと、陽斗はあからさまに笑顔を作って、
「ありがとう!じゃあ行こうか、君達もこんな寒い中集まってもらってごめんね?また明日!」
取り巻きの女の子集団に王子様のような振舞いで言うと、馴れ馴れしく私の肩を持ち歩きだした。
案の定女の子達は美味しいものを頬張ったような表情でそれぞれ帰っていった
「話ってなに…?」
歩いて少し経ってから陽斗に言うと、
「今度の休み、桜モールに朝10時、でいい?」
桜モール…?!最近出来た流行りの服屋とかゲーセンだとか映画館があるアレの…?!
っといけないいけない揺られてしまった。仕方なくいくんだからね私!しっかりしないと
「10時ね、分かった。話はこれだけ?」
「…自覚症状なし…?」
そういうと、私に綺麗な顔がぐっと近づいてきた。反射神経で目を逸らすと、
「…なーんてね」
顔を離して言って笑うと
「君のお母さんに聞いてみて、分かるはずだから、じゃ!僕と遊ぶときまでに体調治しといてねー」
いつの間にか私の家の前に着くと、陽斗は来た道を戻っていった。
「ただいまー」
家に帰ると、さっきの陽斗の言っていたことが頭によぎってお母さんを探した。
「あら、なーに?凪ちゃん」
「あのね…」
と、話をはじめた。きっとこの時私がこの話を始めなかったらもっと穏やかに毎日すごせてたかもしれない。