第5章 ついに始まる学校祭
あ、このスーツ借りたのと似てるな…
「由羅さん、このスーツ貰います!」
「いいよ〜、その辺の引き出しにネクタイとシャツも入ってるわ〜」
私は引き出しから借りたものに似てるやつを探し出し、紙袋に畳んで入れた。
「こっちも終わったわ〜!楽勝だね!」
伸びをしながら欠伸をしている由羅さんにお礼を言うと、突然言ってきた。
「ーてことで、無理するのはい、ま、す、ぐ、やめなさい?
本当は辛かったんでしょ?せめてここでは素の自分でいてもいいから!」
「おいで」というように両手を広げてきた由羅さんに私は飛び込んだ。
「由羅さん…分かってた、んですか…」
「当たり前でしょ…何年あなたのこと見てると思ってるの?」
きっとお母さんがいたらこういう包容力で、私のことを支えてくれたのだろう。
涙声で話していたが、私はたまらず大泣きしてしまった。
「体痛めるの慣れてるって言っても痛いものは痛いし、無理やりされたら心も痛むものよ」
解決してくれるのは時間と人よ、と言って泣き噦る私の背中を優しく叩いてくれていた。
「落ち着いた?…目が真っ赤、それじゃぁ学校で笑い者になるわね?」
クスッと大人の笑みを漏らした由羅さんは自分の道具を使って私にメイクしてくれた。
由羅さんのメイクは目が腫れているのを逆手に取り、生かしている見事なものだった。
「そのメイクにスーツは似合わないから、目が治るまではドレス着てなさい?」
そう言って私のサイズにあった黒ベースに白いレースがあしらわれたドレスをくれた。
「さてと、学校に送っててあげるから行きますか!」
私はそのお言葉に甘えて、送ってってもらった。
「…はい、到着!!睡眠とってから学校祭に行くわね」
「はい、待ってます!ありがとうございました」
校門前に止めてくれた車から降りると、
由羅さんは手を振りながら颯爽と走っていった。
だいぶ気持ちも楽になったし…大丈夫そうだ
私はいくらか軽い足取りで学校に入っていった。