第5章 ついに始まる学校祭
俺たちは倉庫につき、急いで中に入る。
中は生々しい匂いが広がっていて、ところどころ床にシミがある。
「優里っ、どこだっ⁉︎」
奥の方にイスがあった。確かあれは動画でも映っていたものだ。
椅子の後ろには優里が着ていたスーツやカツラが無残に散らばっている。
「なんでいないんだよ…優里っっ!」
叫んでも倉庫に声が響くだけだった。
「斗真行くぞ、まだこの辺にいるかもしれないだろ?」
俺たちは急いで車に乗り込み、周りをグルグルする。
住所を言われた後に優里が俺と兄ちゃんの名前を泣きながら叫んだ声が耳裏に残っている。
誰かいい人が優里を助けたように…。
そう願っていると兄ちゃんの携帯が鳴った。
「もしもし…どうした?………え、それ本当か⁉︎すぐ行くっ!」
俺が「どうしたの?」と聞くと兄ちゃんは笑って言った。
「秋吾が優里ちゃんの事助けたって!
すぐそこのコンビニにいる」
そう言いながら車は走り出し、3分ほど
走ったところにあるコンビニに止まった。
駐車場には数台の車と1人の男性が立っている。
すぐに車を降りてその人の元に行く。
「斗真君っ、蒼茉さん…優里ちゃん、車の中にいます」
車を開けると、後ろの席に優里がいた。
秋吾さんのものと思われるコートを体に纏い、気を失っているようだ。
「優里っ、遅くなってごめん…」
顔に涙の跡が残っているし、手を握ろうとしたら手首が真っ赤だった。
優里をこんな風にした奴への怒りと、優里が無事に帰ってきたことの安心で涙が出てくる。
「斗真っ、優里連れて帰るぞ」
無駄に大きいと思っていたこの車がやっと役に立った。
後ろの席に優里を乗せ、俺も後ろに座る。
家に着くまでずっと頭を撫でたり、手を握ったりしていた。