第4章 彼の正体
黒のショートのカツラに、細い縁のメガネをかけたので執事のようになった。
「…何をするの?」
と私が聞くと斗真は私にバスタオルを渡してきた。
「兄ちゃんがバスタオル持ってきてって言うから執事風に渡しに行って!」
と、なんとも面白いイタズラに私も乗り気になった。
自分の腕にバスタオルをかけ、跪けば完璧な執事だ。
それから少ししたら斗真の言った通り、蒼茉さんがバスタオルを持ってくるように言った。
最初に斗真がバスタオルにするには小さいタオルをわざと持って行き、それで下半身を隠させてから私の登場だ。
笑いがなかなかおさまらない中、タオルを渡してきた斗真が戻ってきたので私は脱衣所へ向かった。
「蒼茉様、お待たせしました。バスタオルでございます」
扉の前でそう言ってから、開けると下半身を隠した蒼茉さんが目を丸くしている。
私は練習通り跪き、「お使いください」
と言ったがそのタオルが取られることはない。
「ど、どなたですか…?」
と本気で分かっていないようだ。
それがおかしくて私は笑い出しそうになったのでタオルを置いて、脱衣所を出た。
リビングに戻り、斗真に報告するとものすごく笑っていた。
私は急いで着替え、何もなかったかのようにする。
きっと明日学校でさっきの姿の私を見たときに驚くだろう。
慌てた様子でスウェット姿で出てきた蒼茉さんはこう言った。
「めっちゃ美青年の執事がバスタオル持ってくる幻覚見た!!」
私と斗真はお腹がはちきれそうに笑ってるのを、蒼茉さんは訳が分からないといった様子で見ていた。