第4章 彼の正体
その直後に蒼茉さんは私に優しいキスをしてきた。
「ーすっごく可愛かったよ、優里」
そう言い終わった瞬間、玄関のドアが閉まる音が聞こえた。
「やっば…優里は服を直して、布団の中に入って寝たふりして!」
蒼茉さんが慌てた様子で言ったので私はすぐに実行して目を閉じた直後だった。
コンコンコン、と扉をノックする音が聞こえた。
「ただいまー!兄ちゃんそこにいるの?」
その声の持ち主は斗真だった。
扉が開く音がして、足音が聞こえた。
「ーえっ、優里っっ!なんでここにいんの!」
「しーっっ!彼女は今寝てるんだ。事情は離すからリビングに行け」
そう言って出て行った斗真の後ろをいく蒼茉さんも出て行く寸前に私の方を見て、申し訳なさそうに笑った。
まだ胸がとてもドキドキしている。
お金目当てじゃない、援交じゃないこういう事は初めてとも言える。
その興奮を抑えるため、私は本当に眠ろうと考えていた。
それから少し経つと玄関のドアの開閉音が聞こえたが、ほぼ夢の中だったので確証はない。
なんだか香ばしい匂い…なんだっけ?
という感じで私は美味しそうな匂いで眠りから目覚めた。
ベッドから降りてリビングへ向かうとキッチンに立つ蒼茉さんと、ソファに座ってる斗真がいた。
「優里っ!大丈夫?痛いところない?」
私が来た事にいち早く気づいた斗真は私をソファに座るよう促してくれた。
「大丈夫だよ、お邪魔してごめんね」
「邪魔じゃないよ、むしろ来てくれてありがとう」
と言ってくれる優しい斗真は私に明日の学祭の紙をくれた。
どうやら今日のリハーサルはうまくいったみたいだ。