第4章 彼の正体
「…ねぇ、もしお家で倒れた時に誰も救急車呼べないから俺の家くる?」
車窓を眺めていると、蒼茉さんがそう提案してきた。
「さすがにそこまで迷惑をかけるのは…」
私が断ると端に車を止め、私に向き合ってきた。
「何かが起きてからじゃダメだ、それに夜…あそこに行くのか?」
私がさっき考えていた事が、すべて筒抜のようで恥ずかしくなった。
「…斗真から1人暮らしの理由は聞いてる。吉原にいた理由も察した。でもせめて今日は休むんだ…。そして、俺の家で休む事!いいね?」
私が頷くとニコッと微笑んで、また車は走り出した。
途中で家に寄り明日必要なものと、着替え類を持って蒼茉さんの家へと向かった。
車が止まったのは秋吾さんの住む社員寮の隣にあった大きな家だった。
まさかこの家が中里家の家だったとは…。
驚きつつも、家のなかへ案内されるとその大きさにビックリした。
想像以上の広さで、なんだか迷いそう。
リビングのソファに座るよう言われると
すぐにコーヒーを運んでくれた。
それから色々とお話をしながら過ごしていると、あの日の夜の話になった。
「あの時の優里ちゃんは可愛かったなぁ〜、俺におねだりしてきてさ?」
「蒼茉さんこそ、最後余裕なくなって可愛らしかったですよ?」
「お?言うね〜!」
なんて話してるとあの日の事を鮮明に思い出してきてしまった。
隣に座る蒼茉さんの体温がなんだか懐かしく感じて、頭を肩に預ける。
「ーどうしたっ?具合悪いか?」
「大丈夫です、少しの間こうさせてください」
私がそう言うと蒼茉さんは「いいぞ」と言ってくれたので、甘えていた。
「….1人じゃないって、いいですね」
不意に漏らしてしまった声が取り消せるわけなく、恥ずかしくなって慌てて体を起こしてしまった。