第4章 彼の正体
みんなに迷惑をかけた罪悪感からか心臓が少々痛む気がする。
もうどうにもならないし、明日の学校祭のスピーチをしっかり暗記しておこう。
ベッドの側にあった私のスクバからクリアファイルから取り出して、繰り返し読む。
大体3分くらいだから、いつも通り。
けどリハーサルを一度もしてないということもあり、少し心配だ。
半分ほど覚えたくらいに、看護師さんが静かに朝ごはんを持ってきてくれた。
お礼を言って、「いただきます」と小さく呟いて橋を握った。
食事を作らなくても出てくるという喜びにしばし感激しつつも、美味しさをかみしめる。
お腹も空いていたため、あっという間に食べ終わり「ごちそうさま」を言う。
看護師さんが食器を下げてくれていた時、むっくりと蒼茉さんが起きた。
「…ん、おはよう〜」
「おはようございます、お疲れのようですね」
眠い目をこすっている蒼茉さんの髪の毛はぴょんぴょん跳ねていた。
「そんな事ないよ、全然大丈夫!」
そう言いながら、自分のバッグからパンを取り出してもぐもぐと食べていた。
蒼茉さんは今日はわざわざお休みをもらった事を話してくれた。
いくら謝っても足りなすぎる。
「謝んないでよ、俺が好きでこうしたしさ?優里ちゃんはとにかく明日の事考えなっ!」
斗真も頑張ってるしさ、と付け足した蒼茉さんは私のプチリハーサルの手伝いもしてくれた。
なんとなくの流れを掴んだお昼ごろ、医者が来て診療してくれた。
「もう退院して大丈夫そうですね、また何かあったらお越しください。それではお大事に」
無事に退院できる事になったのが、今日は安静にしてろと言われたので学校へは行かず、家へ帰る事にした。
それに最近はハプニングが多く、まともに稼げてない。
携帯も買わなきゃいけないし、消耗品も買わなきゃいけない。
重症ではないみたいだから、優しくしてくれる人に抱いてもらおうと思う。
看護師さんが見送ってくれるなか、私は蒼茉さんの車に乗り送ってもらう。