第4章 彼の正体
「バッグも見当たらなかったよ…あとは何入ってた?」
「生徒手帳と携帯、鍵も入ってます」
「それは困ったなぁ、鍵ないと家にも帰れないよね?」
このホテルに泊まるとしても翌朝の学校は?ホテル代は?となる。
私が困り果てていると、秋吾さんが口を開いた。
「ん…嫌じゃないなら俺の家泊まる?
って言っても社員寮だけど。
明日の朝、車で送ってってあげる」
現在時刻は0時45分で終電もない、
残された案はそれしかないようだ。
「…良いんですか?何から何まですみせん!」
「困ってる子、ほっとけないから気にしないで」
そう言って私達はホテルを後にした。
あ、ちなみに真野さんはフロントに預けておいた……。
秋吾さんはタクシーを拾い、わたしを家へと連れて行ってくれた。
「これからは秋吾って呼んでくれるの?」
タクシーの中でいたずらそうにこちらを見て微笑む。
「川崎さんがいいなら秋吾さんって呼びますよ」
「じゃあ秋吾って呼んでね」
そんな会話をしながら私達はお家へと向かった。
結構都会に位置する社員寮はとても綺麗で、大きかった。
そこの最上階に住んでいた秋吾さんの部屋はとてもシンプルだった。
「おじゃましま〜す」
私が部屋に入って時計を見たらすでに1:30だった。
「来た途端寝なきゃだね」と言って笑いながら私は地べたに座った。
「ベッドで寝ていいよ?俺はソファがあるから!」
そう言いながらスウェットに秋吾さんは着替えていた。
私は最初断っていたが、秋吾さんがすでにソファで寝転がったので私はベットに入った。
とてもいい匂いがして、落ち着く。
そんなに幸せを感じながら目を閉じていたが、なんだか寒くて寝れなかった。
「秋吾さん…?」
私が暗い部屋の中でポツリと名前を呼ぶと、すぐに返事は聞こえた。
「どうしたの?ソファは譲らないよ?」
なんて優しさも垣間見える返事だった。
「寒いから一緒にベッドで寝ましょう?ソファだと体痛いから…」
私は一度ベットから降りてソファの元へ行き、秋吾さんをつつく。
「ほんっとに甘え上手なんだから…」
フッと笑みを漏らした後、秋吾さんはベッドに移動してくれた。