第4章 彼の正体
「本当にありがとうございましたっ!
パーカー洗濯して返したいのですが、
会えますか?」
私は駅を出たところで再度礼をする。
「いえ、大丈夫でしたか?
すぐに気がつかなくてすみません…
パーカーはあなたに似合うのであげますよ…なんてカッコつけすぎですかね?」
そう言って彼は照れ笑いをしていた。
「いえ、そんな訳にも…」
「私はもう受け取りませんよ?
お腹が冷えてはいけないですからね」
それではと言い、彼は去っていた。
でも彼が進んだ方向は私も進む方向だったわけでして。
彼の隣へと小走りでいく。
「あなたもこっちだったんですか?
うわぁ、俺カッコ悪い…」
いつの間にか1人称が俺になっている。
目がくりくりでどことなく可愛い彼は
スーツを着ているところ社会人で、きっと20代だと思う。
「お名前だけでも教えてもらっていいですか?」
「川崎 秋吾(かわさき しゅうご)です。」
彼は社会人らしく、私に名刺を渡してきた。
「あ、えと如月(きさらぎ)高校の齊藤です!」
そこまで丁寧に対応されると、私も名乗らないと不躾な気がしたので名乗っておいた。
名刺を改めて見てみると、携帯番号と会社名が書いてあった。
「ーPro luckyって確か高級デパートの?」
書いてある会社名を読むと、そこは中里さんがオーナーのお店だった。
「そうですよ、そこで働いています。
といってもただの従業員ですがね?」
ただの従業員でもあそこで働けるのはすごいと思う。
そんな感じでお話しつつ、時計を確認する。
「わっ、もうこんな時間っ!改めてお電話しますね、ありがとうございました」
私はもう一度頭を下げてから慌ただしく吉原へと向かった。