第8章 【番外編】黒猫と三毛猫。
side黒尾。
そういやあ今何時だ?
投げ捨てたスマホで時間を見れば11時近い。
「そろそろ消灯時間になるけど、時間大丈夫か?」
そう声をかければ莉奈はジャージのポケットからスマホを取り出した。
「うそっ!ご飯もお風呂もまだっ!
センパイのせいでお風呂はいれなくなるっ!」
どうしようと慌てる莉奈を尻目に、俺はスマホをタップし電話をかける。
「おい、莉奈。ちょっと静かにしてろ。静かにしねえと口塞ぐぞ。」
そう言いながら人差し指を莉奈の唇に当てれば莉奈はピタリと黙った。
「ん、いい子。」
そういい頭をなでれば俺の手にすり寄ってくる。
ホント、猫みてえだな。
2回、3回呼び出すコールが流れると、電話の主が電話に出た。
毎年恒例、この時間は酔っ払ってグロッキーになってるんだよなあ。
まあ、そんな状態で申し訳ないけれど使えるもんは使わしてもらう。
電話の主から了承が取れたので電話を切り莉奈と向き合った。
「直井コーチから外泊許可取れた。」
そう言うと莉奈はきょとんとした顔で俺を見る。
「夕飯も食ってねーんだろ?飯に風呂、用意してやっから。」
「私…別に…」
俺から目をそらす莉奈。
そんな莉奈の顎をくい、とあげ、唇が触れるか触れないかの所まで近づく。
「オニイサンといけない夜遊びしよーぜ?」
ニヤリと笑って言えば莉奈の顔が真っ赤に染まる。
そして、小さくこくりと首を振った。
それを見た俺はそのまま唇を奪ってやった。
「よし、行くか。前こいよ。」
俺は運転席に座りなおすと後ろで惚けている莉奈を助手席に引っ張り上げる。
エンジンをかければ、ラジオから流れるサマーチューン。
失恋から始まった俺たちの関係。
俺たちの夏は始まったばかり___