第1章 卒業、そしてはじまり。
電話を切り、しばし佇む。
そんなことを言ってくれるなんて思わなかった。
嬉しいような複雑な気持ちが胸を渦巻き、苦しい。
少し惚けた後我に帰る。
そうだ、みんなを待たせちゃいけない。
みんなを待たせていることを思い出すと私は灰羽家の待つテーブルに戻った。
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「美優さん。大丈夫でしたか?」
席に戻るとリエーフの心配そうな顔。
『うん。大丈夫。』
リエーフの方を見てにこりと笑うと私は良彰さんとレイラさんの方を向いた。
『父に連絡したら大丈夫だそうです。それで…条件があるのですが…』
そう言うと、良彰さんは鞄から用紙を取り出す。
「ああ。まずはお金の話…で大丈夫かな?」
『はい。今までも少し出していただいていましたが、今回のように長期…となると流石に私も両親に甘えてはいられないので…』
「わかっているよ。」
そう言うと、良彰さんは先ほど出した用紙にさらさらと口座番号を書き私に手渡す。
「ここに毎月一定の額入れておくよ。
ついでにリエーフのお小遣いも入れておくから渡してくれたら嬉しい。」
『わかりました。』
「ってことは俺、美優さん家に住んでいいの?」
…嬉しそうですね。リエーフさん。
『そうだよ?あとでいろいろ決めなきゃだね?』
そう言うとリエーフはなんで?と言わんばかりに首を傾げた。
泊まりに来るのと住むのじゃあ全然違うんだよ、とリエーフに伝えてもいまいちピンとはこないようで再び不思議そうにこちらを見つめる。
…まあ、リエーフとは後で話をしよう。
「さて、お二人さん、決めなきゃいけないことは沢山ある。じゃあ次のことについて話をしようか。」
私は話の続きを促す良彰さんに向き合い様々な決め事を話し合った。