第6章 止まらないモヤモヤ。
side灰羽
水道に着き、ティッシュを鼻から取れば血は止まったようで流れ出すことはないみたいだ。
そのことにほっとして水道の蛇口をひねり、手を洗う。
赤が混じった水が元の透明になる様を俺は目で追った。
鼻の下をこすり血を洗い流したあと、気合いを入れなきゃとばしゃばしゃと顔を洗った。
洗ったあとに俺は気づいた。
タオル体育館に置きっぱなしじゃん。
本当に何やってるんだろ…俺。
仕方ない、Tシャツで拭いちゃおう。
その考えを実行に移そうとしたその時、俺の後ろから可愛らしい声がした。
「灰羽センパイ!タオル、使ってください!」
後ろを振り向けば知らない女の子が俺にタオルを差し出している。
誰か知らないけれど、タオル、借りるか。
俺はタオルに手を伸ばすとその女の子に声をかけた。
「ありがとう。ちょっと借りるな。」
ふわふわの女の子らしいタオル。俺はそれを借りるとそれで顔を拭く。
「これ洗って返すな?えっと…名前…」
そう聞けば、女の子は頬を赤く染め俺に名乗った。
「1年3組、一ノ瀬 莉奈(いちのせ りな)です!」
「莉奈…な?覚えた。洗ったら教室まで返しに行くから。」
じゃあな。そう言って俺は体育館に帰ろうとした。
でもできなかった。
腰に小さな塊がダイブしてきたから。