第28章 ねんまつねんし、再。〜第三体育館組、集合前夜〜
side灰羽
「リエーフ、普段お前らって鍋する時何が多い?」
季節のコーナー、鍋つゆが並ぶ棚の前で黒尾さんが俺に問いかける。
普段…?普段か…
「んー、普段は美優さんが出汁取って…とか、おでんにしたりとか…あとはトマト缶からトマト鍋作ったりとか…?」
美優さんとの鍋を思い出しながらぽつりと呟けば、黒尾さんからは長いため息。
「ウワ……贅沢…」
ツッキーも眉間に寄った皺を隠そうともしないでこちらを見る。
流石にそれがみんなが普通にできることだとは思ってはいない。だから美味しいご飯のお礼のつもりで食器洗いはやるし、準備もできそうなところはやらせてもらったりもしてる。
「んー、だと、逆に特殊な鍋つゆとかは食ったことねえ?」
「あー、そういえばないっすね。」
市販の鍋つゆは去年の冬以来。あとはどちらかが遅くなった時用に1人用のぷちっとする鍋つゆがあるくらい。
「スタンダードなやつ以外って今だと何あるんですか。」
売り場の棚に視線を向ければたくさんの種類。悩みながら黒尾さんにおすすめを聞くと、そのまま蹲み込み下の方に手を伸ばす。棚から引き寄せたのは独特の赤いパッケージ。鍋の店とのコラボ品のようだ。
「これと…あと、辛いの苦手なやつ用に豆乳とチーズ…」
カゴに鍋つゆ入れ立ち上がるとそのまま売り場を回る。
豚バラ、鶏肉、肉団子、チーズ、もやしにしめじに白菜、あとは春雨。
そういえば、と思い、チーズと油揚げもカゴに入れれば首を傾げる2人。
「俺がめちゃくちゃうまい具材作りますから!」
そう伝えれば2人は俺の顔を見つめてなぜか吹き出した。