第26章 音駒がくえんさいっ!
マサちゃんと別れ、リエーフのいる視聴覚室への道すがら、みんなにもらったヒントをすり合わせると、クロがニヤニヤしだす。多分クロはリエーフが何に扮装しているかがわかったのだろう。
むしろここまでヒントを出されたのにわからない私に呆れている。
「これはもう行かないとわからねえだろ。ほら、いくぞ。」
ばしんと背中を叩かれながら私たちは視聴覚室に移動した。
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「あ、黒尾さん…と椎名さん。」
視聴覚室の入り口に受付と称して座るのは手白球彦。表情を変えずにぺこりと頭を下げるが、私の顔を見た時に少しだけ口元をひくつかせたのを私は見逃さなかった。
『球彦…マジで来たんだ…みたいな顔はやめて…』
「そんなこと、ないですよ。」
…視線を遠くに逸らされながら言われても……
「なあ、リエーフいるか。」
「います。灰羽は昼休憩以外はいます。…今回のメイン…みたいなもんなんで…」
ちらっと私を見る球彦。
…そんなに私の視線が怖いか。
「今は誰もいないんで……多分先に椎名さんから入ってもらったほうが………灰羽が驚くと思うんで。」
『お化け側を驚かす気はないんだけど…』
「俺が楽しいからいいんです。」
…意外と球彦って腹黒…何考えてるかわからないんだよね。
1人は怖い。
クロに視線を送るけれど多分あの顔は一緒に行く気はない。
でも、リエーフがこそこそ何やってたかわかるなら…
『…いってくる。』
「じゃあ俺はここで後輩弄りながら待ってるわ。』
私が決意を固めると、球彦が入り口のドアを開ける。そしてお客さんが1人入ることを視聴覚室中に伝えた。
「室内は微妙にライトはついていますが念のため懐中電灯を。道順は壁に書いているし一方通行なのでその通りにどうぞ。……灰羽は1番奥の少し広くなった場所です。」
ガラガラ
視聴覚室の扉が球彦の手で開かれ、行ってらっしゃいの言葉。
私は懐中電灯を片手に薄暗い室内に足を踏み入れた。