第26章 音駒がくえんさいっ!
「クロ…来なくていいって言ったじゃん…」
久々に見る研磨の豊かな表情。
受付の代わりに教室前に出された椅子に座った研磨の可愛らしい顔がぐしゃりと歪んでいる。
2年で金髪にした研磨。また金髪に脱色するのが面倒なのか、耳のあたりから上は地毛の黒色、下は金髪のツートンになっている。切ることすら面倒のようで、伸びた髪を後ろで括っている姿は女の子のようでかわいらしい。
『けーんま、久しぶり。』
クロの後ろから顔を出すと歪んだ研磨の顔が柔らかくなり、こちらに微笑む。
「ちょっとクロ、美優いるなら言ってよ。」
「お前がちゃんと見てなかっただけだろ。」
受付から立ち上がると、研磨はクロをどかして私の前に移動し両手を優しく握る。
「美優、会いたかった。今日も可愛い。」
『研磨…私リエーフがいるって言ってるじゃない。』
「そんなの関係ない。おれ、そのうち会社企業するから、社長夫人にならない?お金に苦労させたりしないし。」
どういうこと、とクロに問えば、現在将来のためにいろんなことに手を出しているらしい。
好きなことを仕事にするため、そして誰の下にも就きたくない研磨が考えた、一番楽な方法が企業とのことである。
私には理解できないけれど、研磨がそれでいいならいいのだと思う。
『それで、研磨のクラスは何やってるの?』
教室を覗き見れば、全体的に暗幕がかかった暗い部屋。その中に段ボールで作られたドーム上のものが2つ。
「ああ、プラネタリウム。2人から3人で入る、音声ガイダンス付きのやつ。」
『プラネタリウム…?』
言われてもう一度覗いてみればそんな形。受付と案内係兼機械を動かす係がいればなんとかなっちゃう仕様なのが研磨らしい。
「美優、入る?」
『入りたい…けど、リエーフのところ回ったらにする…』
どうせならリエーフと一緒に入りたい。そう思ったから、今すぐ入るのを断れば研磨は私をじっと見てふわりと笑う。
「リエーフ、今日は引っ張りだこだと思うから時間空くかわからないよ?」