第26章 音駒がくえんさいっ!
『お待たせ。』
エントランスから出ればハザードランプが点滅するクロの車。
助手席に乗り込めば、車はゆっくりと進み始める。
『お待たせしました…』
「そんなに待ってねえから大丈夫だよ。」
まだまだ暑さの滲む外。滲んだ汗を拭いていれば、クロが飲み物を差し出した。
「今日はコーヒーより紅茶がいいだろ。」
赤いパッケージのほんのり甘いストレートティー。
冷たいままのペットボトルを受け取り一口飲めば冷えた液体が喉を潤した。
『ん、ありがと。』
「いーえ。そんで、リエーフの様子は?」
『相変わらずかな。やっぱり私には来てほしくないみたい。』
「まあ、行ったもん勝ちだろ。大した理由じゃなかったら笑ってやろうぜ。」
道路をスムーズに進み、学校の第二駐車場に到着。車を停めたクロと日差しを避けながら少しだけ歩くと、学校の校門にたどり着いた。
時刻、9時57分。
クロが莉奈ちゃんに到着を知らせるメッセージを送っていれば、開場の放送が流れた。
人の流れに添い、私たちも玄関へと進む。
『まずは3年教室だな。』
「だね。じゃあ行こうか。」
持ってきた内履きに足を通せば、一年教室に繋がる階段に足を向けたのであった。