第25章 新学期、はじまり
『終わった……』
9月中旬。約1週間に及ぶ全ての試験が終了。燃え尽きた…
基礎中の基礎だから、覚えなければならないことばかりなのだけれど…疲れた…あとは先生の採点に任せよう…
今日の夕飯は楽したいな。そう思いリエーフに連絡を入れると、最寄駅で待っているとの連絡。最寄駅に降りると制服のままで壁に寄りかかりながらスマホを弄るリエーフを見つけた。
学祭の準備もだけど、来月の春高予選のための練習もあるから毎日頑張ってるもんなぁ。
『リエーフお待たせ。』
改札を抜け正面の壁に寄りかかるリエーフに声をかければこちらを向くリエーフの頬が緩む。手に持っていた端末をポケットにしまいエナメルバッグを斜めに背負ったリエーフは、片方の手を伸ばし私の指に絡めた。
「美優さん試験お疲れ様。今日は何食いに行く?」
『ありがと。何がいいかなぁ。』
ただ楽がしたいからと外で食べる選択をしたけれど…制服と普段着で入れて手軽に食事ができる所。
『ファミレス、焼肉、中華もありか…』
最寄り駅前は居酒屋や焼き鳥屋さんが多い。焼き鳥も食べたいけれど、洋服に匂いがつくのはな…と悩めば、リエーフは牛丼と親子丼、どっちがいいですか?と問う。
親子丼をチョイスすれば、駅前のほぼ全国チェーン店を指差すリエーフ。それも有りだと了承し、店の前のメニューと睨めっこ。リエーフは牛とじ丼の大盛りときつねうどん、私は親子丼に豚汁と唐揚げ1個のセットに決め、店内へ入ると、食券を買って席に座った。
夕方の混む時間。カウンター席しか空いていなかったので2人で並んで座り食券を渡せば間を置かずにすぐに来る食事。2人で小さくいただきますをすると、無言で食べ始めた。
人の作った食事、美味しい…
卵のふわとろ感が絶妙だし、豚汁も具材が柔らかくて味も染みている。それなのに安価で食べられるのがすごい。
無心で食べていれば、隣のリエーフの箸が止まっていてそちらを見れば、頬がゆるゆる。
「もぐもぐしてる美優さんかわいい。」
小さな声でそんなことを言われてしまえば、途端に食べづらくなる。
『リエーフも食べなよ。』
「食べてますよ?」
『手止まってる。せっかく帰りにいつものケーキ屋さんに行こうと思ったのにな。』
7時で閉まっちゃうよと時計を見せれば、リエーフは黙々と口を動かす。
私も急がないと、とスプーンを動かし始めた。