第3章 無理は禁物。
『クロ、買い物までつきあってくれてありがとうね?』
「まあ、こんくらいはなー。」
桜並木から帰宅中、クロが気を利かせていつものスーパーに寄ってくれたので帰りは大荷物。
その荷物を持ち、車を降りた私はマンションに入ろうと入り口に足を向けた。
「おい、美優。忘れ物してるぞ?」
背中から掛かる声に首を傾げる。
忘れ物?
なんだろうなと思い、運転席のクロに駆け寄ると私はクロに問いかけた。
『私、なに忘れた?』
ふわり
先ほど嗅いだ甘い香り。
それが鼻をくすぐったかと思ったら頬にあたたかな感触。
そして、ちゅっとリップ音。
「隙ありすぎ。」
ごちそーさん。
そう言うクロの顔はにやけ顔。
『っ………くろっ!』
「今日のデートの記念ってやつ。じゃあなー!」
『だからデートじゃないー‼︎』
そうクロに叫んだ時にはもう車は走り去っていたのだった。
ずるいよ、クロ…