第2章 わたしたちの決めごと。
そして3月末。
「なんで俺が駆り出されなきゃいけねーんだよ…」
『ありがとークロ。お礼は弾むからー!」
「ありがとうございます!黒尾さん!」
そう。
悪態を吐きながらも来てくれたのは免許取りたて黒尾さん。
さすがに春だから大好物のサンマは無理だけど、他の好きなものを作るのでってことで車を出してもらった。
ちなみにクロの車はヴォクシー。
「どうせみんなで遊びに行くことになるんだろ?だったらでかい車がいい。」
ということで即決だったらしいけれど。
今回はその車の大きさがありがたい。
「中古だからって傷つけたら許さねーからな?」
『わかってるって。あ、ここ左ね?』
「了解。」
中々に上手いと思えるドライビング・テクニック。
流れるようなハンドルさばきに感動を覚える。
『クロ、運転上手いね。』
「まあな。でも免許取り立て、初心者様だからな。安全運転で行くぜー。」
カーステレオから流れるのは有名な桜の曲。
それを口ずさめば、なぜか2人ともおお!とびっくり顔。
『…なによ。』
「いや、歌ってる所あまり見たことねーなと。」
「確かに、美優さんてあまり歌歌わないですよねー。」
レアだぜレアなんてクロに言われたら恥ずかしくて歌えなくなっちゃうじゃない。
『…恥ずかしいんだけど…』
「別に下手だって言ってるわけじゃねーじゃん。」
「普通に上手いっすよ?」
『恥ずかしいから歌いません。』
2人に注目されることが恥ずかしくてそっぼを向けば満開の桜が春の始まりを教えてくれるようだった。