Nachtigall im Kafig(進撃:リヴァイ夢)
第1章 Nachtigall im Kafig
けれど、やはり友達を置いてゆく罪悪感からか、私はもう一目だけ小鳥を見ようと振り返る。そこには周りで起きている騒ぎにびっくりして籠の中で暴れまわる小鳥と、籠をぶら下げた木のすぐ側を歩く巨人だった。
何をしているの、早く逃げて! 巨人を間近に見て恐怖する私は、震えて言葉を発さない唇の代わりに心の中でそう叫ぶ。巨人は動物を襲わない事を知らなかった当時の私は、ただただ逃げたい衝動と小鳥を助け出したい想いで矛盾した気持ちでいっぱいだった。だが複雑な気持ちとは裏腹に、私が行動に出る事は決してなかった。地に足が縫い付けられたかのように、その場を進む事も退く事もない。ただ妙に足取りの悪い巨人が小鳥のいる木にぶつかり、そしてその木ごと倒れ込む姿を眺めていた。
バリバリと木の幹がへし折られ、ガサガサと葉を激しく揺らしながら地面に叩き付けられた木は地響きを立たせる。それに覆い被さるように巨人は呻きをあげながら倒れた。だが数秒もすればヤツは立ち上がる。休日のダラけた親父のようにのっそりと立ち上がった巨人の体を見た途端、私は恐怖を忘れた。否、「忘れた」と言うよりも「考えるのを放棄した」と言った方が正しいだろう。何故なら巨人の胸元には断じて目にしたくなかったものがあったからだ。