第5章 流れの渦
「・・・他に、聞きたい事は?」
『・・・・・・・ないわ』
「・・ないのか。
いろいろ聞かれるかと思っていたな。
力の内容、秘密、制御方法。
後は・・・出生の秘密・・とかな」
覚悟していたのだろう。
そんな表情のシャンクス。
でも、聞いてどうなるの?
『・・私の父が誰であろうと母が誰であろうと・・・私は私よ』
私は、そう思っている。
その決意は、海軍に所属する時に決めた事。
「!!
・・・・そうか・・そうだな」
納得してくれただろうか。
夜空を見上げてしまったシャンクスからはその表情が読めない。
「・・なぁ、それエースに会う事があったら言ってやってくれ」
『・・・何故私が?』
父様の末息子、私の弟だとしても会った事もない人。
多分、見知らぬ私の言葉なんて届かない気がする。
「お前が、が言うと多分届くと思うぞ。
だって、お前ら一緒だろ?」
一緒・・
一緒なのか。
彼も悩んだだろう。
それは、私以上だったかもしれない。
『・・言うだけ言うわ。
ただ、伝わるかどうかは保証出来ないけど・・・』
あぁ、それで構わない と、シャンクスは初めてわたしを見て笑いかけてくれた。
『・・・夜明け前にここを出るから』
「・・何も言わず行くのか?」
本来なら偵察のみで会う気は無かった。
会ったら、ここを離れたくなくなると思ってしまうから。
『えぇ、長居し過ぎたわ。
私、これでも海軍本部少将なの。
部下の安否も気になる事だし、お仕事しなきゃ食いっぱぐれちゃうんだよねッ』
無理矢理いつもの口調に戻す。
そうしなきゃ、この人に甘えてしまう。
だって、思ったより優しい人なんだもん。
優しくしないで欲しい。
この人の差し伸べた手を私は振り切ったのに。
そんな瞳で私の事を見ないで欲しい。
望みを私は、叶えてあげられない。