第16章 第6話 パンドラの箱
不死鳥マルコ・・
マルコ兄様?
何で?
どうして?
そんな事言うの?
『えっと・・
マルコ兄様の事は好きよ、でもそれは兄様としてよ』
「違う」
混乱する私に、ゾロは真剣な目を向けて話し続ける。
「お前は、マルコを好きだ」
『何でそう言い切れるの?
私の事、何も知らないくせに。
クザンに言わせれば好きの感情が乏しいと言われているのに。
下手したら欠落してるって言われてるのに。
何で私の気持ちをわかった様に言うの?!』
私がまくし立てる間、黙って聞いていたゾロが静かに口を開いた。
「お前、キスしてる時何て言ったか覚えてるか?」
えっ?
「お前は呼んだんだよ、名前を。
俺じゃなく、Dr.ベガパンクでもない。
マルコの名前を呼んだんだ」
えっ?
嘘・・・
『・・よ、呼んでない・・・
聞き間違えだよ・・』
信じられなかった。
ゾロが言った事を私は信じられなかった。
だって、呼んだ覚えが全く無いんだもん。
「いや、ハッキリ聞こえた。
お前はマルコと言った」
『そ、そんなはずはないよ』
「何でないと言い切れる」
『だって!マルコ兄様は私の兄よ!
ずっと兄妹みたいに育ってきたんだもん』
「血は繋がってねぇ。
好きになっても誰も何も言う権利はねぇな。
なのに何故、認めねぇんだ?」
違う違う違うッ!!
力任せにそばにあった枕をゾロへ向け投げるが、軽く弾かれ意味をなさない。
「認めろよ、お前はマルコが好きだ。
兄としてではなく、1人の男としてな」
ゾロの言葉が冷たく感じた。
まるで、怒っているみたいに突き放すかの様な響き。
『違う・・』
私は本当にマルコの名前を言ったの?
でも、どうして?
どうしてなの?
「キスしている最中に好きでもねぇ男の名前を普通呼ぶか?」
『・・私はマルコ兄様の事好きでは・・』
好きではない って口に出さなかった。
否定するには言えばいいのに、言うだけなのに
言えなかったんだ。
「それが答えだ。
何がお前を縛ってるのか知らねぇが俺の前では素直になれ。
俺以外誰も聞いてねぇ、誰も知らねぇ」
ゾロの言葉に心が途端に悲鳴を上げる。
気付かないフリをしてきた、淡い恋心。
忘れてしまおうと思っていた、初恋。
今、再び閉じた箱を開けた。