【おそ松さん】もう二度と恋しないなんて言わないで【過去編】
第6章 それぞれの過去
「この小屋を見て、俺はもう、生きることを完全に諦めました。
そもそも、ご主人が連れていかれた段階で、
奥さんが俺にとって蜘蛛の糸だったんですよ。
だからもう、このまま死のうとかそんなこと考えるよりも前に
体から力が抜けて、何も考えられなくなったんです」
目の前で崩れ落ちた幻の紅夜はピクリとも動かない。
「もう何もかもが一瞬でどうでも良くなって、全てを諦めた俺の元に現れたのが、紫雨様なんです。」
突然だった。
音も何もなく、気付けば私・・・否、紫雨は紅夜を見下ろすように立っていた。
「あら、可愛い子狐ちゃん。
ボロボロじゃないのー。
どーしたの?その体。
おねぇさんが治してあげる。」
・・・紫雨はこんな話し方をするのか。
そんなことも知らなかった。
「だ・・・れ・・・・
・・・・・な、・・・なに、を・・・」
紫雨が傷ついた紅夜の体を優しく撫でる。
「あーもう喋っちゃダメよ、しっ!
あたしはね、紫雨って言うの
これでも空狐よ?
あ、厳密に言えば空狐は彼岸なのかな?
ま、いっか!
そういうことだから、よろしくねーん!」
紫雨は一方的にそこまで話終えると
動かしていた手を止める。
紅夜の傷はもう一つも見当たらなかった。