【おそ松さん】もう二度と恋しないなんて言わないで【過去編】
第6章 それぞれの過去
ガサッ・・・ガサッ・・・・・・
数十m先で人間の足音。
幻だとわかっていても、そちらに顔を向けてしまう。
「大丈夫です」
紅夜以外が過敏に反応するが、
紅夜はそちらを目だけで一瞥し、微笑みを崩さない。
幻の中の紅夜達も、ピクリと耳を動かすだけで、
その場から動こうとしない。
「ほれ、ご飯だよー」
足音が近づいてきて、姿はまだ見えないが
数m先で声がする。
その声に紅夜達は弾かれたようにそちらに駆けていく。
後を追うと、そこに居たのは2人の老夫婦。
おーよしよし、たんとお食べ、と
紅夜達を撫でている。
食事を与えているようだ。
「あの人はすぐ近くに住んでる夫婦です。
ネズミ捕りに引っかかったネズミとか、
残飯をああして俺たちにくれるんですよ。」
そうか、紅夜も、初めから人間を嫌っていた訳ではなかったのか。
こんなに穏やかに微笑む紅夜を、
今まで一度だって見たことはない。
ましてや人間に対して。
「この2人は
俺の記憶の中で、唯一心を許した人間です」