【おそ松さん】もう二度と恋しないなんて言わないで【過去編】
第4章 愛なんて知らなくて
そこまで話し終えた紫雨様は
この話は終わり、とでも言うように明るく笑って
「さてっ、いい加減、そろそろ彼岸に体返さなきゃね。
妖力も底尽きちゃったことだし。
体動かないし、この体、屋敷に運んどいてくれる―?
おやすみー」
と、目を伏せた。
俺が屋敷へ運び、1時間後に目を覚ました時には
すでに彼岸様に戻っていた。
起きてすぐはいつものように多少困惑はしていたものの、
状況を把握してからの彼岸様は俺ら2人に平謝りで
なだめるのがすごく大変だったのを覚えている。
その後、そこら中に散らかった、
廃材と化したものを3人で片づけたが、
彼岸様は普通に妖力を使っていらした。
それをみて思ったんだ。
やっぱり紫雨様はお優しい方なんだと。
人間は嫌っているけど
仲間にはとてもお優しい方で。
なにより彼岸様を誰より愛してらっしゃるんだと。
でも、暴れまわって壊して。
なのに俺らにだけいい顔するのは都合がよすぎる、
ってことだと思う。
だから彼岸様の溜まったモノをいい具合に吐き出して
―――――もちろん人間に対してかける情けは皆無だが――――
妖力が切れたふりして、俺達に捕まった。
そう考えると全ての辻褄が合うんだ。
数千年を過ごしてきた彼岸様を
100年と少しの俺らが止められたのも。
目を覚ましてすぐの彼岸様が妖力を使えたのも。
だから、紫雨様。
俺にできるのは、その仮面が外れないように
同じように仮面をつけて。
あなたの"暇つぶし"に付き合うことだと思うんですよ。